これまで、私は教員として働いてきました。
週当番になると毎朝校門の前に立ち、「きちんと挨拶しましょう。」と指導することになっている学校で勤務したことがあります。
反対に、教員が校門に立つことがほとんどない学校に勤務した経験もありました。
どちらの学校の子供たちが挨拶をする習慣を身に付いているのか?
それは、後者の「教員が校門に立つことがほとんどない学校」なのです。
一体、どうしてなのでしょうか?
実はそこに「子供が挨拶をしない原因」や「子供が挨拶をしなくなる原因」が隠されているのです。
「挨拶をしなきゃいけない」というプレッシャー
プレッシャーによって、子供たちにストレスをかけてしまいます。
実はストレスが原因によって、声が出せなくなることがあるのです。
「心因性失声症(しんいんせいしっせいしょう)」と呼ばれ、風邪などの異常がないのに声が出せなくなる症状が起きる心の病気の一つですが、そのメカニズムは解明されていません。
日常生活に支障をきたしてしまう場合は病院への受診が必要となってきます。
そんなに深刻ではない場合は、ストレスを抱え込まず、上手に発散させて、リラックスして過ごすことで症状が治ります。
つまり、子供たちがリラックスして挨拶することができるようにすることが学校教育として重要であり、プレッシャーをかけてストレスを与えてしまうことが逆効果であると言えるでしょう。
挨拶が苦手な子供がますます萎縮する
「挨拶しなきゃいけない」ということは頭で理解できていても、思うように実行することができない子供も少なくありません。
そのような子供の場合、挨拶がでないことを強く指摘されてしまうと、余計に萎縮してしまいます。
「自分はどうして挨拶ができないのだろうか?」と自己嫌悪に陥ることもあるでしょう。
今まではなんとか小さな声で挨拶ができていたとしても、「もっと大きな声で挨拶しましょう。」と注意を受けたことのショックで、声が出なくなることも考えられます。
挨拶の苦手な子供が、ますます苦手意識が強くなってしまっては本末転倒です。
大人の挨拶が子供たちの自主性を奪う
学校では挨拶運動や挨拶週間が実施することがあります。
その目的は「子供たちが自ら進んで挨拶することができるようになる」ことです。
しかし、その期間に一番大きな声を出し、頑張って挨拶をしているのは誰かというと、「教員(大人)」なのです。
「教員(大人)が児童生徒の模範となって積極的に挨拶するべき」という暗黙のスローガンのもとで熱心に取り組むほど、児童生徒から先に発せされる挨拶の回数が減ってしまうのです。
もちろん子供たちも頑張っていますが、教員(大人)の発声や迫力には負けてしまいます。
結局のところ、教員(大人)の挨拶の後に子供たちが挨拶をする習慣が身に付いてしまい、受け身になってしまう傾向が出てきます。
また、朝の校門の周辺では同級生や知り合いの後輩・先輩とタイミング良く出会い、自主的に挨拶ができる絶好のチャンスです。
子供同士の挨拶は、自ら進んで挨拶をしようとする態度が養うことにつながるでしょう。
その間に教員(大人)が入ってしまうと、大事な挨拶の機会を損失してしまいます。
まとめ
人間というのは不思議なもので、何かをやらせようとすればするほど、相手の反発を呼びます。
それは、「挨拶」にも言えます。
つまり、子供たちが教員(大人)に挨拶するように指導を受ければ受けるほど、挨拶をすることの楽しさや大切さを感じなくなり、いつしか強制力が働いた「仕方なくやること」へと変わってしまいます。
さらに悪化すれば「やりたくないこと」へと変容してしまうのです。
子供がリラックスしながら自然に挨拶ができるよう、いきなり「大きな声で元気に挨拶するレベル」ではなく、まずは「軽い会釈ができるレベル」からスモールステップで進めていくことが望ましいでしょう。