昭和の時代。
どんなに暑くて汗をかいていても教師や顧問に「絶対に水を飲むな!」と言われ続け、我慢することによって精神が鍛えられるといった非科学的な取り組みが、学校で当然のように行われていました。
休み時間になると喉の乾きから開放されて、子供たちが一斉に水道に向かい、水をがぶ飲みをしていた光景がありました。
しかし、現在では真逆で、学校では「どんどん水分補給をしなさい。」と推奨しています。
熱中症が心配になる夏以外にも、1年を通して水筒の持ち込みを許可している学校が増えてきているのです。
ただ、多くの学校では「水筒の中身については、水またはノンカフェインの麦茶やお茶のみで、スポーツドリンクを入れないでください。」と通知しています。
では、どうして学校ではスポーツドリンクの持ち込みを禁止している(推奨していない)のか?
理由を説明したいと思います。
過剰な糖分(砂糖)の摂取
スポーツドリンクのペットボトルに書かれている100mLあたりの栄養成分表示の「炭水化物」のところに注目してみましょう。
飲み物の炭水化物とは、ほぼ「砂糖」のことです。
様々なスポーツドリンクの栄養成分表示を見ると、100mLあたりの栄養成分である炭水化物が約4g〜7g程度になっていますので、
100mLあたりの栄養成分が炭水化物 5g = 砂糖5g
500mLのペットボトル = 5g×5 = 25g(スティックシュガー8本分以上)
1Lのペットボトル = 5g×10 = 50g(スティックシュガー16本分以上)
※スティックシュガー1本 = 砂糖3g
となります。
一日の砂糖の摂取量の目安(2015年にWHOが定めた数値)は25gなので、500mLのペットボトル1本分のスポーツドリンクを飲んだだけで一日の砂糖の摂取量に達してしまいます。
1Lペットボトルでは、一日の摂取量の2倍にもなります。
また、スポーツドリンクの“がぶ飲み”によって急激な血糖値の上昇につながり、肥満の原因にもなってしまいますので、十分注意が必要です。
特にスポーツドリンクは、健康に良いというイメージがあるため、熱中症予防対策だからと言って普段から飲み続けると、糖尿病を発症または悪化させてしまいます。
虫歯になりやすくなる
スポーツドリンクなどの清涼飲料水は酸性の飲み物です。
喉が渇くたびにこまめにスポーツドリンクを摂取することで、口の中が酸性(phの値が低くなる)に傾きます。
「虫歯菌(むしばきん)の出す酸が歯を溶かす」と言われているように、虫歯が進行しやすい環境になってしまうのです。
特に乳歯や生えたての永久歯の場合は影響を受けやすくなります。
溶けた歯の成分は唾液によって時間をかけて戻していくのですが、頻繁にスポーツドリンクを飲むことにより、ますます歯が溶ける進行が早くなります。
金属製の水筒にスポーツドリンクを入れるのは危険かも。
酸性度の高い飲み物や食べ物を金属製の容器に入れると、飲み物・食べ物の中に金属が溶け出すことがあり、中毒を起こしてしまう危険性があります。
しかし、金属製の水筒であっても内部にコーティングが施されている製品がほとんどですので、スポーツドリンクを入れたからといって、金属が溶け出すことはほぼありません。
ただし、内部に大きな傷があったりサビついていたりすれば、金属が溶け出す可能性を否定できません。
スポーツドリンクなどの酸性の飲み物を金属製の水筒に入れる際は、水筒の中身を必ずチェックしたり、中身を入れたまま放置したりしないように注意しましょう。
まとめ
学校でスポーツドリンクの持ち込みの禁止の理由を説明してきました。
しかし、炎天下でのスポーツや仕事で大量の汗をかいた時などは、スポーツドリンクの補給が適しています。
運動会や遠足などの行事では、水やお茶を入れた水筒だけでなく、ペットボトルのスポーツドリンクを持たせる学校もあるようです。
このような行事を除いて、学校では一日中運動をしていませんし、基本的に教室での座学になります。
したがって、スポーツドリンクを摂取しないようにしているのです。