給食指導の基本まとめ!「完食はだめ?」に答える小学校の指導ポイント9選
どうも、夢人です。
給食指導をしていて「残さず食べるように言わないと、指導していないと思われるのでは?」「無理に食べさせるのは何か違う…」と悩んでいませんか?
一方で、学校の外に目を向けると、「給食なんて、ただのお昼ご飯でしょ?」「先生は子どもと一緒に食べられて楽な時間だよね」といった声が聞こえてくることもあります。
今回の記事は、給食指導の基本を改めて整理し、「完食はだめ?」という疑問に正面から向き合いながら、小学校現場で迷わず実践できる指導ポイント9選をわかりやすく解説します。

この記事は以下のような人におすすめ!
- 完食を求めないことで、指導力不足だと思われたくない
- 偏食・少食の子にも配慮しつつ、学級全体をうまく回したい
- 給食が“しんどい時間”になってしまっている現状を改善したい
この記事を読めば、完食に頼らず、子どもが安心して食に向き合える学級づくりができるようになります!
学校給食=教育活動=教材

学校では、お昼の時間になると「給食の時間」が設けられており、担任の先生の指導のもと、給食当番を中心に子どもたちが準備や片づけを行いながら、みんなで給食を食べています。
では、そもそも「学校給食」は何でしょうか?
きっと多くの人が、「学校で昼食をとること」「子どもたちが給食を食べること」と答えるのではないでしょうか。
しかし、文部科学省が発行する「食に関する指導の手引 第二次改訂版(平成31年3月)」218ページでは、「学校給食」について次のように説明されています。
1 目的と役割
(前略)昭和 29 年には「学校給食法」が制定され、学校給食の法的根拠が明確になり、教育活動として実施されることになりました。平成 20 年6月に学校給食法が大幅に改正され、従来からの目標である学校給食の普及充実に加えて、「学校における食育の推進」が新たに規定されました。食育の観点を踏まえ、学校給食の教育的効果を引き出し、学校給食を通じて学校における食育を推進するという趣旨が明確になりました。
学校給食は、成長期にある児童生徒の心身の健全な発達のため、栄養バランスのとれた豊かな食事を提供することにより、健康の増進、体位の向上を図ることに加え、食に関する指導を効果的に進めるための重要な教材として、給食の時間はもとより各教科や総合的な学習の時間、特別活動等において活用することができます。
要するに、「学校給食」とはただの昼食ではなく、食育を進めるための学校の教育活動であり、先生にとっては“子どもたちへ指導するために扱う教材”でもあるのです。
世間の人から、「給食の時間は、ただの食事だから先生にとっては休み時間でしょ?」と思われがちですが、実際の給食の時間は、先生にとっても大切な指導の時間です。

学校給食は「教材」であって「給食の時間=指導の時間」なのに、学校によっては先生たちの休憩時間が給食の時間に設定されていることがあるよね!?

給食の時間を「先生の休憩時間」として設定している学校があるとすれば、それは子どもたちに教材を渡しておきながら、指導を行わないのと同じです。
そのため、教育の観点からも、労務管理の観点からも、改善が必要な課題だと考えられます。

また、学校給食は「教材」と位置づけられているにもかかわらず、なぜ先生が給食費(教材費)を自己負担しなければならないの?

教材であるなら、本来は指導のために用意されるものであり、先生が費用を支払う必要があるのか、改めて問い直す必要がありますね。
学校給食の目的

学校給食は「教育活動」であり「教材」ということがわかっていただけたと思いますが、その目的は何でしょうか?
学校給食の目的は「学校給食法 第一章 第一条」に明記されています。
第一条 この法律は、学校給食が①児童及び生徒の心身の健全な発達に資するものであり、かつ、②児童及び生徒の食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上で重要な役割を果たすものであることにかんがみ、学校給食及び学校給食を活用した食に関する指導の実施に関し必要な事項を定め、もつて学校給食の普及充実及び学校における食育の推進を図ることを目的とする。
①児童及び生徒の心身の健全な発達に資するもの
学校給食の目的の一つは、成長期にある子どもたちの心身の健全な発達を支えることです。
栄養バランスが考えられ、家庭では経験しにくい食材や献立にも触れられるよう工夫されていますが、「無理に全部食べさせるため」ではありません。
子どもには、体調や成長の段階、食べる量に大きな個人差があります。
心身の健全な発達を目的とする以上、「食べることが苦しい」「給食の時間が怖い」と感じさせてしまう指導は、学校給食の趣旨にそぐわないと言えるでしょう。
また、給食の時間は、挨拶をしたり、友達や先生と関わりながら食事をしたりする中で、安心感や人とのつながりを育てる大切な時間でもあります。
学校給食は、体を育てる栄養の場であると同時に、心を育てる学びの場なのです。
②児童及び生徒の食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上で重要な役割を果たすもの
学校給食のもう一つの重要な目的は、「何を、どれくらい、どのように食べるか」を自分で考え、判断できる力を育てることです。
給食を通して、子どもたちは次のようなことを学びます。
- 主食・主菜・副菜の役割
- 食材が体に与える働き
- 自分の体調や空腹感に応じた量の調整
こうした知識をもとに、考えながら食べる経験こそが、食育の中心です。
その中には、「少し苦手だけど一口挑戦してみよう」「今日は少なめにしておこう」「おかわりは控えておこう」といった判断も含まれます。
つまり、給食指導で大切なのは、子どもが自分の体と向き合いながら食を選択できる力を育てることなのです。

子どもたちから「どうして学校で給食を食べるの?」と質問されたら、どう答えればいいの?

「学校給食は、みんなの体が元気に育ち、心もやさしく育つようにするための大切な食事なのです。それに、どんな食べ物が体にいいかを知って、自分で考えて食べる力をつけるための学びの時間にもなるんだよ」と答えるようにしましょう。
小学校学習指導要領における「学校給食」

小学校学習指導要領(平成29年告示)の「第6章 特別活動」の184ページには、学校給食について次のように示されています。
エ 食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成
給食の時間を中心としながら,①健康によい食事のとり方など,望ましい食習慣の形成を図るとともに,②食事を通して人間関係をよりよくすること。
①健康によい食事のとり方など,望ましい食習慣の形成を図る
子どもたちが毎日の給食を通して、体によい食べ方や食べ物の選び方を自然と身につけていくことを目指しているという意味です。
たとえば、「野菜も残さず食べよう」「よくかんで食べよう」「栄養バランスのとれた食事が大切だ」といったことを、給食の時間にくり返し体験することで、子どもたちの中に“正しい食の感覚”が育っていきます。
これらは、大人になってからの健康にも深く関わる、大事な生活習慣の一部です。
つまり、給食はただ空腹を満たすものではなく、将来の健康や生き方にもつながる「食の学び」の時間でもあるのです。
②食事を通して人間関係をよりよくする
子どもたちが一緒に食べる体験を通して、友だちとの関係を深めたり、思いやりの心を育てたりすることを意味しています。
給食は、単に「食べる時間」ではなく、みんなで食事を囲む中で「ありがとう」「どうぞ」「いただきます」などの声をかけ合いながら、相手を大切にする気持ちやマナーを学ぶ貴重な場です。
また、配膳を手伝ったり、苦手な食べ物にチャレンジする友だちを応援したりすることで、仲間との信頼や絆が少しずつ育まれていきます。
こうした日々の積み重ねが、子どもたちの人間関係づくりの土台となり、安心して過ごせる学級づくりにもつながっていくのです。

これも、子どもたちから「学校で給食を食べる理由」を聞かれたときに、使えそうだね。

「学校給食は、バランスのよい食事のとり方を身につけて、元気な体をつくるために大切なんだ。また、みんなで楽しく食べることで、友だちとの仲がもっとよくなるからだよ。」と伝えることもできるね。
完食指導は必要か?

給食指導について考えるとき、多くの人がまず思い浮かべるのが「残さず食べることは良いこと」「完食できるのはえらいこと」という価値観でしょう。
実際、学校の現場では長い間、こうした考え方を前提にした“完食指導”が当たり前のように行われてきました。
完食指導とは、学校給食の場面において、子どもたちに対して「出された給食はすべて食べ切ること」を望ましい行動・達成目標として求める指導のことです。
しかし、本当にこの指導は、子どもの成長や学びにつながっているのでしょうか?
完食指導が子どもに与える影響
「全部食べなさい」という価値観を前提にした完食指導をすることで、子どもには次のような影響が表れやすくなります。
- 食事が「楽しい時間」ではなく「苦しい時間」になってしまう
- 「残してはいけない」という思い込みから、強いプレッシャーで喉を通らなくなる
- 「また残してしまった」という経験を重ね、自己肯定感が下がる
- 偏食や少食の子どもが、不安やストレスを抱えやすくなる
また、「なんで残すの?外国では食べ物がなくて苦しんでいる人もいるんだよ」といった善意からの声かけが、結果的に子どもの安心感を奪ってしまうケースも少なくありません。
このように、「完食=正解」という考え方に基づく指導は、教育的な意味を持たない場合が多いのです。
なぜ先生は完食指導をしてしまうのか?
多くの教員は、自身が子どもの頃に「全部食べなさい」と指導されて育ってきた経験から、無意識のうちに 「完食=良いこと」 という価値観を持っています。
本来であれば、大学の教職課程や初任者研修などで給食指導の考え方を体系的に学ぶ機会があってもよいはずです。
しかし、学校現場では次のような状況が重なり、完食を求める指導が続いてしまいます。
- 残食が多いと、管理職や先輩から「あなたのクラスは残食が多い」と指摘される
- 残食量によって、学級や学校が評価・比較される風土がある
- 残食が多い学級では、「子どもは給食をきちんと食べられていますか?」
と保護者から心配の声が上がりやすく、その対応として完食を求めてしまう - 子どもたち一人ひとりの少食や偏食、体調の違いに丁寧に向き合うには時間も人手も不足しているため、全員に完食を求める管理しやすい指導が選ばれてしまう
この問題は、特定の教員の意識の問題ではなく、学校全体の仕組みが生み出している構造的な課題だと言えるでしょう
「量の自己調整」を軸にする
「完食」をゴールにしてしまうと、先生も子どもも「食べ切ったかどうか」ばかりを気にしてしまいます。
そこで大切なのは、「量の自己調整」を学ぶ機会をつくることです。
- 自分の体調や空腹感に合わせて取り分ける
- 苦手なものは「一口から」挑戦してみる
- 適量を自分で考える力を育てる
こうした選択の積み重ねが、食に関する判断力につながります。
「どうしよう…全部食べなきゃ!」ではなく、「今日はこれだけ食べよう」と自分で決められる安心感こそ、学校給食が育てたい力です。
学校給食の指導のポイント9選

【特別活動編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説の58ページには、学校給食の指導について次のように示されています。
(前略)給食の時間は,①楽しく食事をすること,②健康によい食事のとり方,③給食時の清潔,④食事環境の整備などに関する指導により,望ましい食習慣の形成を図るとともに,食事を通してよりよい人間関係の形成を図る。そして,⑤適切な給食時間を確保した上で,給食の準備から後片付けを通して,計画的・継続的に指導する必要がある。また,食を取り巻く社会環境の変化により,栄養摂取の偏りや欠食といった食習慣の乱れ等に起因する肥満などの生活習慣病,食物アレルギー等の問題が指摘される現在,⑥家庭との連携が今後更に重要になる。心身の健康に関する内容にとどまらず,自然の恩恵への感謝,食文化,食料事情などについても⑦各教科等との関連を図りつつ指導を行うことが重要である。
これらの指導に当たっては,⑧栄養教諭の専門性を生かしつつ,学校栄養職員や養護教諭などの協力を得て指導に当たることも必要である。また,これらの学校給食に関する内容については,学級活動の授業時数には充てない給食の時間を中心に指導することになるが,⑨学級活動の時間でも取り上げ,その指導の特質を踏まえて計画的に指導する必要がある。その際,学校給食を教材として活用するなど多様な指導方法を工夫することが大切である。
①楽しく食事をすること
学校給食において言われる「楽しく食事をすること」とは、ただ“にぎやかにおしゃべりをしながら食べる”という意味ではありません。
これは、子どもたちが安心して、心地よく、気持ちよく食事ができる環境や関わり方を大切にすることです。
また、「食べたくない子が無理に食べさせられる」「注意されてばかりで楽しくない」ような給食時間になってしまっては、本来の目的を果たせません。
「おいしかった!」「また食べたい!」と思える経験を重ねることが、食への興味や関心につながっていくのです。
②健康によい食事のとり方
「健康によい食事のとり方」とは、子どもたちの体が元気に育ち、生活リズムや心も整っていくような食べ方のことを指します。
学校給食は、栄養教諭(栄養士)が子どもたちの年齢に合わせて栄養のバランスをしっかり考えて作られている食事です。
だからこそ、給食の時間を活かして「なぜこれを食べるのか?」「どんな栄養があるのか?」を伝えることで、子どもたちは“健康によい食べ方”を自分で考えて選ぶ力を身につけていきます。
また、給食の時間はお腹を満たすだけでなく、先生の声かけや友だちの姿を通して、食べ方やマナー、食べものの役割など「食の大切さ」を学ぶことができます。
③給食時の清潔
子どもたちが安全に安心して食事をするために、身の回りや体をきれいに整えることを意味します。
もし衛生管理が不十分であれば、食中毒や感染症のリスクにつながることもあります。
だからこそ、担任や栄養教諭は連携しながら、子どもたちが自然と「清潔に食べる習慣」を身につけられるよう、日々の声かけや丁寧な指導を重ねることが大切です。
④食事環境の整備
これは、子どもたちが安心して、気持ちよく給食を食べられるように、教室やその周囲を整えることです。
ただ単に机やイスを並べるだけではなく、落ち着いて食事に向かえる雰囲気や衛生面の配慮、声かけや時間の流れなどを整えることすべてが含まれます。
こうした環境が整うことで、子どもたちはただ「食べる」だけでなく、「楽しく食べる」「人と関わりながら食べる」ことの心地よさを実感できるようになります。
⑤適切な給食時間を確保した上で,給食の準備から後片付けを通して,計画的・継続的に指導する
学校給食を、子どもたちの食の習慣や協力する力を育てる教材として扱うためには、「時間のゆとり」と「毎日の積み重ね」が必要です。
準備から片付けまでの流れを、慌てることなく安全に行えるよう、十分な給食時間を確保することが大切です。
そして、正しい手洗いの仕方、配膳のルール、食事中のマナー、片付けの手順などを、毎日くり返し、計画的に教えていくことで、子どもたちは自然とできるようになっていきます。
このような継続的な指導があるからこそ、子どもたちは「自分で気づいて動く力」「感謝の心」「みんなと協力する楽しさ」を育てていけるのです。
⑥家庭との連携
近年、社会の変化により、朝ごはんを食べない「欠食」や、好きなものばかり食べる「偏食」が増え、子どもたちの栄養バランスがくずれやすくなっています。
その結果、肥満や生活習慣病のリスクが高まったり、食物アレルギーへの対応も難しくなったりすることが指摘されています。
学校では、栄養バランスのとれた給食や食育の授業を通して、子どもたちが健康的な食の知識と習慣を身につけられるように指導します。
一方、家庭でも朝ごはんをしっかり食べる、アレルギー情報を共有するなどのサポートが必要です。
このように、子ども一人ひとりの健康な成長のために、学校と家庭がつながって支える体制を整えていくことが大切です。
⑦各教科等との関連を図りつつ指導
学校給食を活用し、各教科の授業で学んだことと結びつけて深く理解させる工夫することが求められます。
たとえば、社会科で地域の特産物を学んだあと、その食材が使われた給食が出ると、「この野菜は地元で育てられているんだ」と、学びが実感になります。
また、理科で栄養や体のしくみを学んだあとに、給食の中の栄養バランスについて考えることで、「自分の食べ方が体にどう関係しているか?」「食べ物を口に入れたら、どのように消化されるのか?」も自然と分かってきます。
子どもたちは「知って終わり」ではなく、「使える知識」として定着させることができ、食に対する関心や理解がより深まります。
⑧栄養教諭の専門性を生かしつつ,学校栄養職員や養護教諭などの協力を得て指導に当たる
給食指導や食育を行うときに、担任の先生だけでなく、専門知識をもつ先生たちとチームで協力して取り組むことが有効です。
たとえば、栄養教諭(栄養士)は「この献立にはどんな栄養があるのか」「どんなふうに食べたら健康にいいのか」などをわかりやすく伝えるプロです。
養護教諭は、体調に合った食事のアドバイスや、アレルギーへの対応をサポートしてくれます。
それぞれの立場で子どもたちを支えることで、より安全で安心な給食時間が実現し、一人ひとりに合った細やかな指導も可能になります。
このような連携によって、子どもたちは「食べることの大切さ」や「健康に生きるために必要な知識」を自然と学ぶことができるのです。
⑨学級活動の時間でも取り上げ,その指導の特質を踏まえて計画的に指導する
学校給食に関することを、給食の時間だけで終わらせず、学級活動の時間にもしっかりと扱うようにしましょう。
たとえば、「なぜ残さず食べることが大切か?」「どんな食べ方が健康につながるか?」など、子どもたちがじっくり考えたり話し合ったりする時間をとることで、給食がただの食事でなく“学び”になるのです。
この時に大切なのが、「今日はこのことを伝えよう」「このテーマでふり返らせよう」というねらいをもった計画的な指導です。
前述の内容と重複しますが、栄養教諭(または栄養士)や養護教諭(保健の先生)も指導者として関わってもらい、連携しながら授業を組み立てていきましょう。
まとめ
今回は、給食指導の基本を改めて整理し、「完食はだめ?」という疑問に正面から向き合いながら、小学校現場で迷わず実践できる指導ポイント9選について紹介しました。
- 学校給食は「ただの昼食」ではなく、食育を進めるための大切な教育活動・教材であること
- 「完食」をゴールにする指導は、子どもの心身の健全な発達や自己肯定感を損なう可能性があること
- 家庭や各教科、栄養教諭・養護教諭との連携を図りながら、給食の時間と学級活動の両方で食育を進めていくことが大切であること
この記事を読んだことで、「完食させるべきかどうか」という迷いから離れ、学習指導要領に基づいた給食指導を自信をもって行えるようになります。
また、給食の時間を「しんどい指導の時間」から、子どもも先生も安心して向き合える学びの時間へと変えていけるはずです。
今日から改めて、給食を“教材として扱う時間(教育活動)”として見直し、子どもたちの豊かな成長を支える取り組みを始めていきましょう!

